ビルの防水工事のポイント
ビルやマンションのオーナーの中には、所有物件の防水工事をどのように実施すれば良いのかお悩みの方がいらっしゃるかもしれません。
本記事では、ビル・マンションなどの一定以上の高さの鉄筋コンクリート構造の建築物の防水工事のポイントについて解説いたします。
ビルの定義
建築基準法やその他の法律・法令には「ビル」(ビルディング)についての定義は書かれていません。また、学術的な定義も不明確です。
ビル(ビルディング)という用語は、法律用語や学術用語ではなく、日常会話で使用する用語です。
複数の国語辞書にビル(ビルディング)の定義として、「鉄筋コンクリート構造で、一定以上の高さの建築物」というような記載があります。
この定義によれば、商業施設やオフィス用のビルだけではなく、マンションもビルの一種に含まれます。
ビルの防水工事の特徴
一般住宅と異なり、ビルの防水工事は施工面積が広く、防水工事のコストが大きいことが特徴です。
ただし、しっかりと検討を行えば、コストダウンは可能です。
放置して漏水が発生してから対処すると、余計なコストが発生します。
定期的にメンテナンスを行えば、低コストで維持管理が可能です。
ビルの防水工事は様々な種類が存在し、建物の用途や施工箇所によって適した工法・材料が存在します。
ビルの防水工事の種類
一般的な用途のビル(商業ビル、オフィスビル、マンションなど)について、屋上やベランダの防水工事の代表例を以下に示します。
防水工事の種類 (工法・材料) | 対象部位 | 1㎡あたりの価格 (目安) | 特徴 |
---|---|---|---|
アスファルト防水 | 屋上・(面積の大きい)ベランダ | 4500円〜6500円 | 歩行の可能性がある陸屋根(傾斜が強くないフラットな形状をした屋根)に適している。マンション・ビルの防水として最も古くから存在し、信頼性が高い。 |
ウレタン防水 | 屋上・ベランダ | 4500円〜6500円 | 塗り重ねるタイプの防水材。屋上やベランダに様々な設備が存在し、シートを敷設できない場合に適している。 |
シート防水 | 屋上・ベランダ | 4500円〜6500円 | 工場で予め製造された防水シートを貼り付けていく工法。工場で大量生産されており、品質管理がしっかりしている。信頼性が高い。施工期間が短い。 |
FRP防水 | 屋上・ベランダ | 6000円〜8000円 | 風呂場の湯舟にも使用されてお防水性と強度を兼ね備えた材料。マンション・ビルの屋上に水槽やプールを設置する場合にも対応可能。 |
これ以外にもビルには多種多様な箇所があり、様々な工法・材料が存在します。
また、業者によって、価格や得意分野が異なります。
必ず複数の業者に問い合わせて、見積もりを出してもらった上で比較検討しましょう。
マンション管理組合と修繕計画
分譲マンションの場合、マンション管理組合の設立および区分所有者全員の加入が法的に義務付けられています。
マンション管理組合では、共有部分(屋根を含む)の防水工事の計画の策定や、業者に対する依頼が行われます。
日々の管理だけではなく、修繕計画(防水工事含む)の策定や実施をマンション管理会社へ委託しているマンション管理組合も存在します。
マンション管理会社では、管理人の常駐や、清掃員の派遣、木や花の手入れ、防犯カメラの維持管理、エレベーターの維持管理など、マンションの管理に必要な様々な業務を一括して請け負っています。
ただし、必ずしも防水工事に関してのプロではないことに注意が必要です。
防水工事を得意分野にしている業者の場合は問題ありません。
しかし、特別に防水工事を得意分野にしていないマンション管理会社の場合、全ての管理業務を一括して委託する中で、防水工事まで任せてしまって良いのかどうか、検討の余地はあります。
一度、防水工事に関しての見積もりを他の複数の業者に出してもらって、比較検討してみてはどうでしょうか。
コストダウンが可能になるケースもあります。
まとめ
一戸建ての住宅と同じように、マンションやビルも「建築したらそれで終わり」というわけではなく、長くメンテナンスを実施し続けていく必要があります。
雨漏りが発生すると建物の躯体部分までダメにしてしまう可能性があるため、定期的に点検を行い、防水工事を実施することは重要です。
一人でビル全体を所有している場合は、自分の判断だけで修繕計画を決定し、業者に依頼することが可能ですが、分譲マンションのように多くの区分所有者が存在する建物の場合、マンション管理組合での議論を経て決定することになります。
漫然と「これまで付き合いのある業者だから」とか「マンションの管理業務を全て一括で委託しているから」という理由で防水工事を任せている場合、割高な施工料金を支払っている可能性があります。
防水工事には様々な種類が存在し、使用する材料も千差万別であり、業者によって得意・不得意も異なるため、複数の業者に見積もりを出してもらって、比較検討してみるべきでしょう。
いずれにせよ今回の情報を、住居の未来を考えるきっかけとしていただきたいです。