防水の種類と工法
このページでは防水の種類ごとの特徴を解説いたします。
種類毎に耐用年数や金額、お勧めの仕様箇所等が大きくことなりますので、
各防水の種類の特徴を理解しながら、防水工事会社の選定を進めて行きましょう。
耐久年数 | 価格 | お勧め対象 | 厚さ | |
---|---|---|---|---|
ウレタン防水 | 12年前後 | 普通 | 全て | 3.0mm〜 |
シート防水(ゴム) | 13年前後 | 安い | 屋上 | 1.2〜2.0mm |
シート防水(塩ビ) | 13年前後 | 安い | 屋上 | 1.5〜2.5mm |
FRP防水 | 10年前後 | 普通 | ベランダ | 3.0mm〜 |
アスファルト防水 | 20年前後 | 高い | 屋上 | 5.0mm〜10mm |
※耐久年数内でも5年前後に1度のメンテナンスが必要となります。
ウレタン防水
ウレタン防水は、ポリイソシアネートを主成分とする主剤と、ポリオールを主成分とする硬化剤を、撹拌して塗膜する防水法です。下地の形状に馴染みやすく、水密性が高い連続皮膜が得られるのが特徴です。
一言で言うと、下地に塗るだけで防水層を形成する工法です。ウレタンは不定形材料のため、施工場所の形状が複雑でも、簡単かつ確実に施工できるのが特徴で、しかも軽量です。
施工場所に物があっても、別素材の旧防水層があっても、その上から施工できます。
材料を塗るだけなので、改修工事として簡単な工事であり、工期も短く済み、コストも全面改修に比べ半分
以下で済みます。また撤去する廃材も出ないので、環境保全・産廃処理の観点からも優れています。
ウレタン防水は、液体のウレタンを塗膜することによって防水層を形成する工法なので、下地の形状に馴染みやすく、また簡単で短期間で終わり、さらに安価であるという長所があります。
シームレスな防水層ができるので、屋上やベランダなど施工場所を問いません。また臭いも発生せず熱の発生もないので、周辺環境へも優しい工法です。
既存の防水層があってもその上から塗ることが出来、また高性能のウレタンを重ね塗りして弾性を高めることも出来ます。
ウレタン防水は簡単に安価に防水層を塗膜できる工法のため、最近広く使われています。短所らしい短所はあまりありません。
しかしあえて挙げるならば、人の手で塗るため、完全に均一にはならないということ、完全な外観にはならないということでしょうか。もちろんこれは、専用の機器を用い、最低限にすることが出来ます。
また、経年による劣化と、亀裂に弱いことが挙げられます。これは上から重ね塗りすることによって解決出来ます。
ゴムシート防水
ゴムシート防水は、シート状に成形した合成ゴム系の防水シートを、接着剤などで下地に貼り付ける防水工法です。
シートそのものは安定した分子構造を持ち、ゴムのため伸縮性が高く、耐候性にも優れますが、シート同士の接着は接着剤と粘着テープによるので、溶融一体化しないという特徴があります。また厚みが薄いのでやや損傷しやすいのも特徴です。
しかしコスト面で比較的安価であり、手軽にでき短工期で済む工法なので、目立ちにくいところの工事や
応急処置としては、最適な防水工事と言えます。また軽量であるのも大きな特徴で、上に保護層を塗れば
軽歩行も可能です。
接着工法と、塩ビシートの特徴を取り入れた機械的固定工法があります。
ゴムシート防水の長所は、材質が合成ゴムなので、伸縮性が高く伸びがあり、下地の亀裂にも柔軟に追随することです。
温度による物性変化が少ないので、施工地域による制約も少なく、耐用年数も長いです。
ゴムシートを接着剤と粘着テープによって貼り付ける工法なので、短工期・低コストです。目立ちにくいところの防水工事や応急処置にも最適です。
また軽量なので、木造建築にも向いています。上から保護層として塗装材を厚塗りすれば、軽歩行も可能です。
ゴムシート防水は、しっかり接着するために、下地が平らである必要があります。そのため複雑な形状には採用にしにくい工法です。
シート同士を貼り合わせるので、接着剤の性能がそのまま防水の性能となる傾向があり、接着剤の耐用年数が問題になります。紫外線でシートが次第に劣化していき、またシート自体が薄いため、鳥害や衝撃に弱いという特長もあります。
また、接着剤や素材自体に化学物質を使用するので、シックハウスに注意する必要があります。
塩ビシート防水
塩ビシート防水工事とは、塩化ビニール樹脂で作られた防水シートを接着剤などで下地に貼り付ける工法です。
シートを接着剤で貼るだけなので施工性に優れており、複雑な形状や狭い場所でシート同士のジョイントがたくさん発生した場合でも、シート同士を熱風で溶かして一体化できます。
既存の下地があっても、下地調整がほとんど必要ありません。
紫外線・熱・オゾンに対し優れた耐久性を持ち、耐候性に優れています。また鳥害も受けません。単層防水
のため工期も短く低コストで済み、また意匠性に優れ、色や模様がプリントされたシートもあります。
接着工法と機械的固定工法があり、後者では下地が湿潤状態でも施工が可能です。
塩ビシート防水は、耐候性の良い塩化ビニール樹脂をベースに、耐久性を付与した防水シートを使用した
工法です。紫外線・熱・オゾンに優れた耐久性を持ちます。
カラフルな色や模様を生かしたものもあります。
高い伸縮率と耐摩耗性を持ち、保護層なしで軽歩行が可能です。
また鳥害も受けにくく、鳥のついばみによる穴開けも発生しにくいです。
シートは柔らかく曲げやすいので、施工しやすく、下地の撤去が必要ないので改修工事に最適です。
短工期・低コストで済みます。
塩ビシート防水は、シートを使用するので、しっかり接着するためには下地が平らである必要があります。
シート同士の接合をしっかりする必要がありますが、接着剤でうまくいかない場合は、熱風で溶かして接着する必要があります。またシートを急に曲げたりすると、切れやすくなります。
また、塩化ビニールは元々硬い素材で、柔らかくするため「可塑剤」が添加されていますが、それが気化してしまうと当然硬くなり、割れやすくなります。耐久年数は10〜15年です。
FRP防水
FRP防水は、強度が高く耐久性に優れたFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を応用し、FRPの被覆防水層を形成する工法です。その防水層は軽量かつ強靭で、耐水・耐食・耐候性に優れていることが特長です。
軽量強靭であり、保護層が不要で、直接露出防水として施工できます。重歩行や車両走行にも耐えられます。
また硬化するのが速いため、一日か二日で施工作業が完了します。
出来上がった防水層は継ぎ目のないシームレスな構造になり、外観的にも奇麗な仕上がりになります。
ただ施工中(樹脂が硬化するまでの間)は、臭いが周囲に広がることがあるので、臭気対策が必要です。
最近では特に木造住宅のバルコニーや、屋上、薬品層や下水道施設などに使われています。
FRP防水には最近注目されている防水材です。
ガラス繊維で補強されているので軽量ながら強靭で耐久性に優れ、重歩行や車両の走行も可能です。
様々な形状に施工でき、継ぎ目のないシームレスな層を形成します。下地への密着性が強いので防水性に優れ、下地の膨張・圧縮にも剥離の心配は少ないです。
様々な形状に製作でき、着色も自由です。硬化速度が速いので、施工も一日か二日で完了します。さらに保護層が不要で、建物自体を軽くできます。
FRP防水は、プラスチックならではの欠点がいくつかあります。
まず紫外線が長期間当たると、劣化してヒビ割れてしまうこと。これが最大の欠点です。定期的にトップコートを塗り替える必要があります。伸縮しにくいので、地震などで建物が揺れた場合も、ヒビの危険性があります。
また施工(硬化)の際に化学物質が発生するので、臭気対策をする必要があります。
あとはリサイクルが難しい点も、長い目で見れば欠点でしょう。
アスファルト防水
アスファルト防水とは、合成繊維不織布にアスファルトを含ませコーティングした、シート状のルーフィングを貼り重ねて形成する工法です。ルーフィングを積層することにより、水密性に優れた防水層が構成されます。
熱工法は、アスファルトを高熱で溶融し、シートを複数枚交互に積層します。密着工法と絶縁工法があります。
トーチ工法は、シートの裏面と下地を、バーナーであぶり溶かしながら貼り付けます。密着工法と絶縁工法があります。常温工法は、液状のアスファルト材を用い、ルーフィングを複数枚交互に積層して貼り合わせます。接着工法と絶縁工法があります。いずれも、防水層が厚く連続しているため、施工のばらつきが少なく、信頼性の高い工法です。
アスファルト防水の長所は、歴史が古く、信頼性が高いところです。アスファルトを染み込ませるので、
防水性能を確保しやすく、コストもそれほどかかりません。
防水層が厚く連続するので、水密性が高いのも特徴です。
最近では工法が改善され、工事中の臭いの発生も少なくなっています。
保護モルタルで押さえれば耐久性もかなり高くなり、また他の工法よりも耐用年数が長いので、メンテナンスの回数も減少させることができます。
アスファルト防水にも短所があります。
高熱で溶かす必要があるのでその際危険があり、工事中に臭いが発生します。
幾層も重ねた上にアスファルトを流す手間もかかるので、工事の手間が多くなります。
上を歩く場合、露出したままにはいかず、上に保護モルタルを貼る必要があります。そのため屋根が
重くなってしまうので、木造建築には向いていません。
また紫外線が当たると硬化して劣化していきます。それを防ぐために保護が必要になります。