ビルの防水工事の種類とポイント
建物の建築工事の中で重要な部分を担っているのが「防水工事」です。
住宅であれば屋根や床・壁に防水処理を施し、雨が侵入しないように施工します。
それはビルも同じことです。
しかも、高層になるにつれて紫外線の影響を受けやすく劣化が激しくなってしまいます。
屋上がしっかりと防水処理されていないとビルの中は水浸しになってしまいます。
そこで今回は、ビルの防水処理工事の種類とそのポイントについて、皆さんにご紹介していきたいと思います。
これから補修工事を行おうとお考えの方の参考になりましたら幸いです。
ビルの防水工事の種類を把握する!
防水工事にいくつも種類がある事を知っているでしょうか?
それぞれの工法に使っている素材、メリット・デメリットをしっかりと把握することで、適切な処置を施す事が出来るのです。
ビルの防水工事に用いられるのは主に以下の4つの工法です。
- アスファルト防水工法
- FRP防水工法
- シート防水工法
- ウレタン防水工法
- 浸透性塗布防水工法
では、各工法の特長、メリット・デメリットを見ていきましょう。
人気No.1工法「アスファルト防水」
ビルの防水工事として一番ポピュラーなものがこの「アスファルト防水」です。
アスファルト防水とは合成不織布シートにアスファルトを染み込ませたものを重ねて敷き詰め、かさなり部分にもアスファルトを塗ることで防水効果を発揮するという工法で、日本では古くから使われてきた工法でもあります。
敷き詰めるシートを“ルーフィング”と言い、アスファルトルーフィング工法とも言います。
このルーフィングを積層することで水を通さない防水層が形成されます。
古くから使われていることもあり今現在でも人気の高い工法です。
基本的に大きなデメリットもなく施工のバラつきも少ないため、信頼性の高い防水方法として知られています。
デメリット
先ほどアスファルト防水に大きなデメリットは無いとお話ししました。
しかし、厳密にはデメリットは存在します。
それは工事中に発生する「臭い」です。
アスファルトを熱で溶かしながら施工するため周囲には独特のキツイ臭いが漂う事になります。
工事業者は慣れているのですが、近隣の方への配慮が必要となり、クレームの対象となってしまう事もあります。
また、アスファルトは紫外線によって劣化がしやすい物質でもあるため、上から保護をしてあげる必要もあります。
価格もこれから紹介する防水工事に比べて高価なため予算との兼ね合いが必要です。
FRP防水工法
FRPとはガラスの繊維を特殊なプラスチックに織り込んだ耐久性の高い材質です。
その材質を用いて防水を行うのがFRP防水工法です。
FRPの大きな特徴として“軽量”という事が挙げられます。
軽くて強いFRPは防水工事だけでなく、船の船体や浴槽、果ては航空機や宇宙船にも使われているほど信頼性の高い素材です。
その他特徴としては耐水・耐腐食・対候性に優れているという事が挙げられます。
施工のスピードも速く、硬化に時間を要しません。
工事開始から早ければ2日ほどで終わることも大きな魅力です。
継ぎ目もないため水の通り道を造らず高い防水性を発揮し、見た目にも美しい仕上がりになります。
デメリット
FRPは基本材質がプラスチックのため、紫外線が長時間当たり続けることで劣化が進んで行きます。
劣化することでひび割れが起きてしまう危険性があり、そこから漏水してしまうのです。
また、硬質で伸縮性が皆無のため、大きな地震や台風等でビルが揺れた際にはFRP層が割れてしまう事もあるのです。
こういったことを防ぐために定期的なメンテナンスとトップコートの塗り替えが必要となります。
メンテナンスを欠かさなければ優れた防水工法であると言えます。
シート防水工法
シート防水とは手軽且つ防水性の高い工法です。
シート防水と偏に言っても、「ゴムシート防水」と「塩ビシート工法」の2種類が存在し、それぞれのメリット・デメリットが存在します。
FRPの大きな特徴として“軽量”という事が挙げられます。
軽くて強いFRPは防水工事だけでなく、船の船体や浴槽、果ては航空機や宇宙船にも使われているほど信頼性の高い素材です。
ゴムシート防水
ゴムシート防水とは合成ゴムをシート状にして敷き詰める防水工法です。
特徴としては「安価」「軽量」「施工が短期間」の3つが挙げられます。
アスファルトのように熱で溶かしたりする必要がなく、シートを屋上に貼りつけるのが基本工事のため、工期を短縮する事が出来るうえ費用も比較的安価という事で人気の高い防水工法です。
伸縮性もあるため多少の揺れで断裂してしまう事もなく、温度による変質も起きにくいので耐用年数が長いことが魅力です。
塩ビシート防水
船尾シート防水とはその名の通り塩化ビニル樹脂をシート状にして使用する工法で、主に屋上下地に張り付けて施工します。
切り貼りも簡単で、変わった形の場所も簡単に施工する事が出来ます。
耐久性が高いことも特徴で紫外線や熱にも強いのです。
メーカーによってはカラフルな商品を用意しており、他の防水と違っておしゃれな仕上がりを施すこともできるのです。
シート自体は伸縮性があり、こちらも地震等の揺れでも断裂しにくくなっています。
デメリット
どちらの工法も下地に張り付けて施工するため、下地が平坦になっていることが必要です。
地面の起伏がある場所では採用しにくいのが欠点です。
また、シートを隣り合わせて貼り付けるため、接着剤の性能が防水の性能を左右してしまい、シートの耐久年数よりも接着剤の耐用年数が重要になってしまいます。
シートが薄いため、上に載って歩いたりするにはあまり向いていません。
衝撃に弱い材質なのです。
ウレタン防水工法
ウレタン防水は2剤を混合するタイプのもので、塗膜することで効果が得られる防水工法です。
下地がガタついていても基本的にはなじみやすく、性能も高いことで人気の高い工法でもあります。
下地に塗るだけで防水層を形成できるという事で、工事自体も比較的簡単で確実な施工がウレタンの魅力です。
重量もかなり軽く、新築はもちろん前回施工した防水塗膜の上からでも問題なく施工できるのも大きなポイントです。
かかるコストも他の防水工法に比べて安価で済み、防水をはがす際にも廃材が出ないので環境面でも優秀な工法と言えます。
塗膜工法なので継ぎ目がなく、漏水の恐れもほとんどありません。
また、ウレタン防水を施した上から性能の高いウレタンを塗布することで性能を格段にアップさせることもできるのです。
デメリット
ウレタン防水工法は比較的簡単で安価な工法のため広く用いられています。
特に特筆すべきデメリットもなくかなり高性能な防水工法と言えるでしょう。
ただ、人の手で塗布するため均一な平坦にはなりづらいという点が欠点と言えるでしょう。
浸透性塗布防水工法
浸透性塗布防水工法とは別名「浸透性コンクリート工法」とも呼ばれ、ケイ酸塩を含むコンクリートを下地コンクリートに直接塗布する工法です。
水を介してコンクリートに含まれる水酸化カルシウムと反応して躯体そのものに防水性能をもたらす、新しい工法の一つです。
近年施工実績が増えてきたばかりの工法ですが、定期メンテナンスを必要としないという点を強みとしています。
デメリット
他の防水工法と違いこの工法自体が防水層を造るわけではないので、躯体自体の水密性に効果が依存していまいます。
次の項では防水処理を選ぶポイントについてお話していきます。
どの防水工法を選ぶのが正解?
前項までは各工法のご紹介とメリット・デメリットをご紹介してきました。
ここでは、場合によってどの防水を選ぶのが良いのかをご紹介していきます。
防水工法を選ぶうえでのポイントは以下の通りです。
- 躯体の劣化状況
- 既存ではどの工法を使っているか
- 屋上をどのように利用するか
以上3つのポイントを掘り下げていきましょう。
躯体の劣化状況によって選ぶ工法は変わる
前述したように防水工事にはいくつかの種類があり、そのどれもが高い防水性を誇っています。
しかし、どの工法でもいいのかと言われると決してそうではありません。
新築のビルであれば基本的にはどの防水工法でもうまく施工する事が出来、高い効果が期待できるでしょう。
しかし築年数が経ち劣化してしまったビルではすべての防水工法が対応できるわけではありません。
劣化した屋上にはアスファルトルーフィング工法が向いており硬化の高い防水を施す事が出来ます。
既存ではどの工法を使っているか
築年数が経ったビルでは新築時やメンテナンスで防水を施している場合が多いです。
そんな時、その防水工法を用いればいいのか。
基本的に塗膜系の防水は対応していますが、これに関してはきちんと防水工事を請け負っている会社に相談することをおすすめします。
以前にどの工法を使ったかによって上からかける防水に合う合わないが発生するようです。
屋上をどのように利用するか
屋上に人が上がるのか、何か作業するかによって施工する防水工事の種類は変わってきます。
基本的に人が上がってこない屋上であればシート防水が向いています。
シート防水はシート自体が薄いために断裂しやすい物です。
上から保護膜を塗布することで軽く歩く程度であれば可能になるようですが基本的には人が上に乗る事には向いていません。
逆に人が良く上がる屋上であればアスファルトルーフィングが向いています。
シートを重ねて上からアスファルトを塗布するこの工法は、上に人が歩いても全く問題なく防水効果を発揮してくれます。
まとめ
今回はビルの防水工事の種類とポイントについてお話してきました。
偏に防水と言っても種類は多岐にわたり、それぞれに性能差があります。
向き不向きもはっきりしているので、ご自身のビルに得意としている防水を選ぶことで最大級の防水効果を発揮できます。
ビルの防水工事は内装やインテリアよりもよっぽど大事なポイントです。
信頼できる業者を選んで、効果の高い防水工事を行ってくださいね!