防水工事は何年もつの?
防水工事は何年もつのか気になっている方は多いことでしょう。
建造物の外回りは、時間の経過に伴い、目に見えない細かなキズが付いたり、ヒビが入ったりして、大きな亀裂が生じてしまうケースがあります。
ヒビや亀裂から雨水が入り込むと、建物の躯体部分の鉄骨や鉄筋にまで到達してしまう場合もあり、サビや腐食の原因となって建物全体の寿命を短くします。
建物を長持ちさせるためには、雨に濡れる可能性のある部位へ、定期的なメンテナンスを行う必要性があります。
特に屋上・屋根は常に雨風に晒されている部位なので注意が必要です。
本記事では、様々な防水工事のタイプごとに、何年くらいもつのか、どのくらいで点検・修繕をすべきなのか、といった問題について解説いたします。
防水工事の耐用年数を左右する要因
防水工事は、
- 工法
- 使用する材料
- 工事の質
- 環境
(雨・風・雪に晒されるかどうか、温度変化、日照条件、通行量など)
といった要素によって耐用年数が変化します。
防水工事の種類別の耐用年数
防水工事の質は、施工業者によって千差万別です。
同じ材料や工法に分類されていても、実際に使用される材料や施工される状況には差異が生じます。
工事対象部位の環境についても、どの程度の雨や風や雪に晒されるか、温度変化、日光の照射状況、通行量、その部位の利用頻度など様々であり、中々、一概に論じることはできません。
あくまでも目安として、代表的な防水工事の種類別に耐用年数等を示すと、以下のようになります。
防水工事は、これ以外にも多様な手法が存在します。
また、施工業者によって得意分野があるので、複数の業者に問い合わせて決めるようにしましょう。
防水工事の工法・材料 | 耐用年数 | 特徴 |
---|---|---|
ウレタン防水 | 10〜15年 |
|
シート防水 | 10〜15年 |
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FRP防水 | およそ10年 |
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アスファルト防水 | 15年〜25年 |
|
アスファルト防水は、施工費用が高めですが、その分、耐用年数が長くなっていることが特徴です。
ただし、あくまでも一般的な話であって、通行頻度が多かったり、過酷な環境(温度変化、豪雪、台風など)に晒されていれば、これよりも早く寿命が来てしまうケースもあります。
施工費用が安いウレタン防水やシート防水であっても、アスファルト防水に匹敵する期間、機能を果たし続けるケースもあります。
どれだけ長持ちするかは結果を見ないと分からないので、自分の財務状況を勘案して種類を決めても良いのではないでしょうか。
耐用年数が近づいたら、必ず業者に依頼してプロの視点で点検をしてもらいましょう。
また、業者への依頼とは別に、自分自身でできる範囲でチェックを行いましょう。
3か月ごと、1年ごと・・・という感じで、節目節目に点検を行うことで、建物の異常を早期発見し、重大な問題が起こる前に対処が可能となります。
定期点検・修繕の必要性
可能な限り、定期点検を実施し、損傷などの問題が発覚した場合は、早めに修繕を行いましょう。
損傷部分を放置しておくと、雨漏りの原因になったりします。
なお、雨漏りが発生した場合は、耐用年数に関係なく、すぐに修繕工事を行うべきです。
放置して、建物の柱や梁など躯体部分まで腐食が進んでしまうと、大規模な改修工事が必要になる事態へ発展するケースがあります。
耐用年数まで時間があっても、時々(数か月〜1年に1度くらい)、目視や指触で点検を行って、異常が無いか自分自身で確認してみる方が良いです。
例えば、大阪府所有の建築物の場合、年に1回、施設管理者が目視点検を行うような規則が定められています。
一般住宅においても、最低でも1年に1度は自分で各部位をチェックする方が良いでしょう。
なお、屋根など転落事故の危険性がある危険な部位は専門業者に任せるべきです。
分譲マンションの場合はマンション管理組合が定期的に点検や修繕を実施する規定が存在するはずです。
マンション管理組合の規約を確認してみましょう。
大規模なマンションの場合、住人の中に、建築士の資格を持っている人がいたりするため、そのような有資格者の意見を参考にするのも良いことです。
防水工事で難しい判断を迫られるのは下地の処理です。
良好な状態で防水工事を施工する場合は、新設する防水層をかぶせて工事することが可能なケースもあります。
しかし、劣化が進行している場合は、古い防水層を完全に除去して下地作りから始めなければならず、費用が増大する場合があります。
時々点検を実施して、異常があったら早めに工事を行うことで、建物全体の寿命を延ばすことに繋がり、総費用を抑えることも可能になります。
自分で点検する際のチェック項目
自分自身で目視・指触によるチェックを行う際に、確認すべき点を挙げます。
これが全てというわけではないので、自分自身の点検だけで満足するのではなく、異常を感じたり、耐用年数が近づいたら、業者へ依頼して点検をしてもらいましょう。
- 雨漏りの発生
- 水平に長いひび割れが外壁に発生
- コンクリートを叩くと、カラカラと乾いた音がする
- 床面のコンクリートの目地が飛び出している
- 外周の立上り面(腰壁面)のコンクリート、モルタルが割れている
- 排水溝(ドレイン部)周辺にひび割れ・破断がある、雑草が生えている
- 防水層が破れている
- 防水層の重ね合わせ(ジョイント)部分に隙間が生じている、剥がれている
- アスファルトの水たまりが酷い、植物が生い茂っている
- 外周の立上り面の上面(笠木面)にひび割れが生じている
- 防水立上り端末金物上部のシーリングが硬化している、破断している
- 防水シートのコーナー部分にしわが寄っている、大きく縮んでいる
- 防水シートの一部に虫食いのような穴が開いている(鳥が引きちぎった可能性)
- 塗膜防水面が全体的に白く、粉っぽくなっている
- 塗膜防水面が剥がれて、下地が出てしまっている
- 下地がひび割れし、塗膜防水面も一緒に切れている
- 塗膜防水面の一部が膨れている
以上の問題が生じていた場合は、業者を呼び、プロの視点で調べてもらいましょう。
万が一、補修工事が必要であれば、早めに実施しましょう。
保証について
保証が付いている場合、その保証期間内であれば、無料や安い料金で修繕工事を施工してくれる場合もあります。
保証期間は業者によって異なりますが、20年間というケースもあります。
新たに修繕工事の契約を行う際には、施工後の保証の有無も業者選択の基準の一つになります。
分譲マンションの場合、マンション管理組合がマンション管理会社と長期契約を結んで、建物の修繕計画・修繕工事から管理人の常駐や共用部分の清掃、監視カメラの維持管理などに至るまで、トータルで任せているというケースがあります。
一度、防水工事に関してどのような契約になっているか、保証内容を含め、マンション管理組合の理事会が開催された際などに確認してみると良いでしょう。
自由な契約に基づく保証とは別に、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)で定められている瑕疵担保責任保証期間が存在し、新築住宅購入者は修補請求権や損害賠償請求権などを新築時から10年間有しています。
品確法で保証される部位は、「柱や梁など住宅の構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」です。
万が一、新築から10年以内に防水工事を実施せざるを得なくなった場合、屋根や外壁の場合は、品確法の適用となる可能性があります。
なお、2005年の構造計算書偽装問題発生後、売主が品確法で定められた瑕疵担保責任を十分に果たすことができない場合に備えて、住宅瑕疵担保履行法が制定されました。
2009年10月1日以降、新築住宅の販売業者は保証金の供託か住宅瑕疵担保責任保険への加入を義務付けられています。
住宅瑕疵担保履行法に基づき、住宅瑕疵担保責任保険法人として以下に示す5社が国土交通大臣によって指定されています。
- 株式会社住宅あんしん保証
- 住宅保証機構株式会社
- 株式会社日本住宅保証検査機構
- 株式会社ハウスジーメン
- ハウスプラス住宅保証株式会社
供託所へ保証金を供託していない新築住宅販売業者は、上記5社のいずれかと保険契約を締結しており、契約の際に保険加入の証明書を渡されるはずです。
補修費用として支払われる保険金の上限は2000万円となっています。
供託も保険加入もしていないまま新築住宅を販売する業者は住宅瑕疵担保履行法違反となります。
万が一、そのような業者が存在した場合は、国土交通省住宅局住宅生産課住宅瑕疵担保対策室や消費者センター、弁護士に相談しましょう。
まとめ
防水工事には、多種多様な工法・材料が存在し、施工業者によって工事の質も異なるため、耐用年数は一概に論じられません。
しかし、上述した通り、防水工事の種類ごと大まかな目安は存在するので、それを参考に補修工事実施年度までに工事費用を積み立てておくべきです。
費用は住宅の面積や立地条件(豪雪地帯なのか、雨量がどうなのか、気温、日照条件など)によって異なるため、地元の複数の業者から見積もりを出してもらいましょう。
なお、自分自身の目で見たり、指で触って正常か異常か判断できる事項もあるので、定期的に状態をチェックしてみましょう。
問題が発生している箇所を発見した場合、なるべく早く補修工事を実施しましょう。
放置しておくと、建物の躯体部分まで問題が拡大し、結果的に多額の費用が掛かるケースもあります。
新築工事やリフォーム工事の後、何かトラブルが生じた場合、まずは施工業者に問い合わせましょう。
それでも解決できない場合は、建築士や行政機関(国土交通省や消費者センター)、弁護士に相談してみましょう。