防水工事の躯体調査では何を行うのか
防水工事業者に自宅の防水工事に関する相談や見積を行うと、現地調査だけでなく躯体調査も行われることがあります。
しかし、日常生活で躯体調査という言葉自体、見聞きする機会はありませんので多くの方は、良く分からず悩んでいるのではないでしょうか。もしくは、防水工事業者の提案に従ったり任せたりしているかと思います。
確かに防水工事や躯体調査は、施主側で何か行動するする必要はありません。しかし、基礎知識があれば、今何が行われているのか・手抜き工事がされていないかなどを見抜ける可能性があります。
躯体調査とは、防水工事そのものを指す言葉ではなく、建物の構造に関する調査を指す言葉です。
そこで今回は防水工事と関係のある躯体調査について、調査概要や必要性、防水工事との関係性などについてお伝えします。
防水工事の躯体調査とは
まずは防水工事の躯体調査とは何か、概要から解説します。躯体調査の躯体とは建物を指す言葉で、建物の構造に関する調査を指します。
そして躯体調査が必要なケースは注意も必要ですので、少なくとも概要は理解しておくのがおすすめです。
躯体調査の概要
躯体調査とは、建物の中でも特に鉄筋コンクリートに対して行われる、不具合調査です。躯体調査を実施する時は、既に建物のどこかに以下のような不良が発生しています。
- 雨漏り
- 漏水
- 施工不良
- 設計不良による耐震性低下
- 構造部の破損
どの不良も建物を使用・生活する方にとって、重大な問題ですので躯体調査を提示された時は、上記のような不良が起きていると意識しておきましょう。
防水工事の前に躯体調査を行う理由
躯体調査は住宅建築後に、何かしら不具合を感じた時や外壁塗装工事・リフォーム、そして防水工事の前に実際されることがあります。
しかし、躯体調査自体は防水工事の、工事内容に元々含まれているものではありません。ではなぜ行うのか。たとえば防水工事の事前調査(現地調査)では、建物の外観や室内をチェックできるものの、構造部までは調査が難しいです。
一方躯体調査の場合は表面の破損だけでなく、超音波などを使用して内部の漏水箇所まで特定できます。ですので、漏水箇所が構造部など内部のどこかの場合は、防水工事会社が躯体調査を提示することもあります。
躯体調査の流れ
躯体調査の流れは基本的に、以下のような形式です。
- 鉄筋コンクリート構造の建物に向けてレントゲン撮影
- ①の調査と同時にレーダー探査で原因調査
- シュミットハンマーと呼ばれる強度測定器でコンクリートの強度を調査
- 劣化の状況を詳細に調査するためコンクリートの一部を採取、また採取した箇所は後に修繕
- 目視による鉄筋コンクリートの状態確認
- サンプルの測定や報告書作成
後述で更にご紹介しますが、他にも超音波による測定など様々な調査方法があります。また、躯体調査の目的は、漏水や破損な様々な目的に合わせて調査内容も変わるので、どのケースでも同じではありません。
躯体調査の費用
続いては躯体調査に掛かる費用について、いくつかの調査会社などの費用を参考に傾向をご紹介していきます。躯体調査は、防水工事会社とは別に専門の調査会社があるので、今回は調査会社の費用を参考にしています。
躯体調査の基本料金
たとえば躯体調査の専門会社の場合は、料金を調査方法に分けてサービス提供していることが多いです。
また、更に基本料金と調査料金の2種類に分けて、調査内容によって調査料金が変動する仕組みです。
料金例
以下にいくつかの調査会社を参考に、料金例を調査ごとに分けてご紹介します。
- 打診調査:基本料金は建物の状況や面積による
- ひび割れ調査:ひび割れ箇所や数による
- サーモグラフィー調査:調査個所による
- 躯体強度RCレーダー:基本料金7万円前後、調査料金1㎡辺り5000円前後
- X線調査:基本料金7万円前後、調査料金3000円前後、追加料金150円〜
- コンクリート中性化深度測定調査: 基本料金7万円前後、調査料金1㎡辺り5000円前後
基本的に躯体調査の費用は公開されているケースが少なく、見積提示の際に詳細な料金を確認できる仕組みです。また、防水工事も含めてサービス提供している業者も、同様の傾向ですので明確な料金設定は依頼前に確認できません。
そのため、躯体調査の費用を比較したい時は、相見積を行う必要があるでしょう。
防水工事の躯体調査の種類
ここからは防水工事などで活用する、躯体調査の調査方法についていくつかご紹介します。躯体調査の調査方法は、音やX線、サンプル採取など様々なアプローチをしているのが特徴です。
赤外線サーモグラフィー
防水工事で躯体調査を実施する理由は、漏水箇所が外から確認できない場合もあるからです。屋根や外壁のひび割れであれば、躯体調査の必要なく目視などで特定できます。
しかし、建物の内部に異常がある場合は、破壊検査か非破壊検査のどちらかを選ぶしかありません。そして非破壊検査で漏水個所を特定する方法の1つが、赤外線サーモグラフィーを用いた調査です。
赤外線サーモグラフィーとは、赤外線を検知可能の特殊なカメラを使用して、建物内の温度差を視覚的に分かるよう色で識別します。
そして漏水の場合は、水が漏れている箇所とそうでない箇所で温度差が発生しています。この温度差を赤外線サーモグラフィーで検知し、漏水個所を特定する仕組みです。
ちなみに防水工事だけでなく、外壁の剥がれや浮きなどの調査をする際にも活用されています。
目視
躯体調査の中で特にシンプルな方法が、目視です。調査員が肉眼で建物の外観や室内など、人が入れる場所や確認できる場所は全て調査します。
目視による調査のメリットは、機材の準備時間やコストを掛けることなく大まかな漏水箇所、そして場合によっては特定できるところです。
また、躯体調査のプロは、私達一般の方とは比較にならない程、シビアに細かくチェックするのでシンプルかつ精度の高い方法といえるでしょう。
漏水箇所の調査の場合は、一般的に目視と赤外線サーモグラフィーを組み合わせます。
ヒアリング
ヒアリングとは、その名の通り依頼者から直接不具合に関する状況説明をしてもらい、どのような躯体調査を行うことが適切か判断します。
躯体調査は様々な測定機器を用いるものの、何・どこを目的に調査するか明確にならないと調査方法を決めることができません。
そのためヒアリングも躯体調査の中で、重要な作業です。
X線発生器による鉄筋調査
X線による調査方法は、X線発生器を調査個所に向けて設置し、内部状況をレントゲン撮影します。また、主に耐震性や構造部の不具合などに用いる調査方法です。
具体的には建物内の鉄筋の位置や構造、太さや各種ケーブル類の位置関係などを調査する場合に、X線発生器を使用します。
RCレーダー
RCレーダーとは、両手に収まるかどうか程の大きさの装置を、不具合箇所周辺の壁や床・天井などに当てます。そして当てた状態で、RCレーダー本体から電磁波を照射し、内部の位置や状態を探ります。
基本的に鉄筋の位置関係や、太さを調査する際に使用するのが特徴です。また、ケーブル類についてはRCレーダーで探査できないため、こうした調査には活用しません。
調査する時は複数の箇所をスキャンして、鉄筋の位置を把握します。
打診調査
打診調査とは、打診棒と呼ばれる金属製の棒(球体のついた棒など)で、建物の壁や天井など調査個所を、転がしながら音を鳴らします。
そして音の変化を調査員がシビアに判断し、内部のひび割れや破損個所を特定する仕組みです。調査員の経験が全てを左右する方法で、特に高度なスキルを要求されます。
測定機器を用いずに調査できるのがメリットの一方、調査の手が届く範囲でしか1度に調査できないのがデメリットです。そのため、測定箇所が多い・広い場合には、非常に時間が掛かります。
躯体調査の依頼方法
意外と分かりにくい躯体調査の依頼方法について、ご紹介します。
躯体調査専門会社に依頼する
1つは躯体調査専門会社に依頼する方法です。国内には、多数の躯体調査のみを事業としている企業があり、様々な調査技術を持っています。
雨漏りが発生していて原因が建物内部の可能性があれば、先に躯体調査専門会社へ依頼してみるのもおすすめです。
躯体調査も行う防水工事会社に依頼する
もう1つの方法は防水工事会社に依頼する方法です。しかし、全ての防水工事会社が、躯体調査まで対応している訳ではありません。
ですので防水工事会社のHPを確認したり、電話で確認したりしてみるのもいいでしょう。
他にも当サービス防水工事セレクトナビにて、相見積時に確認してみるのもおすすめです。
防水工事の躯体調査ではサーモグラフィーなどを使用して漏水個所を特定する
防水工事の基本は、事前の現地調査と防水工事、そしてアフターフォローの3点です。しかし、現地調査だけでは漏水個所を特定できない場合があり、防水工事会社の中には躯体調査を実施したりすすめたりすることがあります。
躯体調査は見積時の現地調査とは異なり、赤外線サーモグラフィーなど専用の測定機器を使用して、鉄筋コンクリート構造を調査するのが特徴です。
そのため漏水の原因が分からない時などに、役立つ調査といえるでしょう。
一般的に躯体調査は躯体調査専門の会社があるので、防水工事の前に依頼する場合もあるでしょう。また、防水工事会社が躯体調査も対応していることがあるので、一括で依頼したい時は、見積時に確認をとることが大切です。
当社防水工事セレクトナビでは様々なサービス・料金の優良防水工事会社を提示しているので、躯体調査など含めて業者選びに悩んでいる時は、是非ご利用をご検討してみてください。