アスファルト防水工事の種類とメリット・デメリット
防水工事は屋根や外壁、屋上など建物の様々な場所に施す工事です。
そして、それぞれの状況に合わせて、防水工事の種類も多様化しています。
その中でも屋上防水でよく用いられる工法が、アスファルト防水と呼ばれる工事です。
アスファルトといえば、一般的に道路をイメージするのではないでしょうか。
私達が普段使用している道路はアスファルトを主成分としていて、防水剤としても効果を発揮しているのが大きな特徴です。
今回はアスファルト防水工事の仕組みをはじめ、特徴や強みアスファルト防水の種類を分かりやすく紹介します。
特に屋上防水の依頼を検討している方は、アスファルト防水工事を把握しておくと業者を比較する際に役立ちます。
アスファルト防水とは
まずはアスファルト防水工事の仕組みや主な特徴、費用相場などについて解説します。
アスファルト防水工事は、多くの防水工事業者が対応してくれる一般的な工法です。
アスファルトが含まれたシートを使用する防水工法
アスファルト防水工事とは、合成繊維不織布と呼ばれるタイプのシートにアスファルトを浸透させて、防水剤としての役割を加えた状態で防水箇所に敷き詰める工事です。
また、アスファルト防水工事の工程ですが、まず下地を敷きます。
そして下地の上にアスファルトが含まれた合成繊維不織布を貼り付け、下地とコーティングされたシートで雨水などを防ぎます。
合成繊維不織布とは織り込まない合成繊維の布です。
ランダムに敷き詰められた繊維を接着したり熱を使ったりすることで、1枚の布へ変化します。
アスファルト防水の細かな作業工程は、大きく分けて3種類です。
そのため、アスファルトコーテイングされた防水シートの貼り付け方や、アスファルトの溶かし方・重ね方が大きく異なります。
主に屋上防水で用いられる工法
アスファルト防水は、主に屋上防水を必要とする現場で用いられているのが特徴です。
屋上は一戸建て住宅でも見かけますが、一般的にマンションやアパートなどの建物で採用されている設計です。
さらに屋上は防水面積が広く屋根と違い水たまりも発生しやすいので、他の防水工法よりもコストを抑えやすく、古くから実績のあるアスファルト防水がよく用いられています。
また、屋上を管理している方の中には、コンクリートだけでなく緑化させたいと考えるのではないでしょうか。
アスファルト防水の場合は仕上げ方法を柔軟に変えられるので、防水層を構築した上で植物を設置することができます。
アスファルト防水の費用相場
アスファルト防水の費用は防水工事業者によって変わりますが、一般的に1㎡あたり6000円から8000円で設定されています。
シート防水などと比較すると安いというほどではありませんが、防水工事に掛かる準備や作業内容を考慮すると、高いわけではありません。
たとえば熱工法の場合は、工事現場にアスファルトを熱で溶かす業務用の大型機械を設置したり、職人によって品質が左右されたりします。
また、費用計算は防水工事を施す面積だけでなく、人件費や機材、防水箇所の状態や周辺環境によっても変動するのが基本です。
アスファルト防水の耐久年数は10年から20年程度
アスファルト防水を施してから防水効果を発揮し続ける年数は、平均10年から20年と考えられています。
耐用年数を過ぎると、防水層がひび割れたり劣化したりするため、雨漏りや汚れの付着などさまざまな問題が発生します。
ですのでアスファルト防水工事を依頼・施工してもらったら、次の防水工事時期も事前に確認しておきましょう。
また、防水工事業者はアフターフォローサービスも用意しているのが基本ですので、依頼前に品質保証サポートがあるか確認することも重要です。
もし、何もメンテナンスやアフターフォローがない場合は、優良業者とはいえない可能性もあります。
アスファルト防水の種類
続いてアスファルト防水を、種類ごとに分けて紹介します。
アスファルト防水の中には、熱工法とトーチ工法、常温工法と3種類に分かれています。
そして、それぞれのアスファルト防水工法は、手順や防水の仕組みなどが異なるため費用や工期なども異なるのが特徴です。
これからアスファルト防水を依頼する方も、どのような防水工事が施されるのか知っておくと適切な内容なのかある程度判断できます。
熱工法
アスファルト防水の工法1つ目は、熱工法と呼ばれる作業方法です。
アスファルト防水の熱工法では、ルーフィングと呼ばれるシートと熱で溶かしたアスファルトを重ねて防水機能を作り上げます。
工事内容としては、まず溶融釜と呼ばれるアスファルトを液体になるまで溶かす専用釜を、防水工事の現場に用意します。
そしてアスファルトは220℃から270℃程度で溶けるので、溶融釜の中で熱して溶かす作業を行います。
溶けたアスファルトは、ルーフィングと呼ばれるアスファルトが含まれているシートの上に貼り付け、接着剤としても使用するのが特徴。
さらに溶けたアスファルトの上にルーフィングを貼り付け、何度か積み重ねるのが熱工法の基本です。
熱工法の密着工法
アスファルト防水の熱工法には、さらに2種類の作業内容に分かれているのが大きな特徴です。
1種類目は密着工法と呼ばれる、熱工法です。
熱工法の密着工法とは、下地にルーフィングを貼り付ける防水工事で文字通り密着させるのが基本です。
そして下地と密着する工事内容のため、熱によって下地が収縮した場合防水層にひびが入る可能性があります。
ただし耐久性があるので、重歩行(重量のある物が上から荷重・動く場合)や、人が歩いても問題無く防水効果を発揮できるのが強みです。
熱工法の絶縁工法
2種類目は、熱工法の絶縁工法と呼ばれる防水工事です。
絶縁工法の場合は、アスファルトで構成された防水部分と、下地の間に穴が空いたシートを入れます。
穴を空けたシートを入れる理由は、下地やコンクリート部分が収縮しても防水層へ力を直接かけないよう逃がすことができるためです。
そのため絶縁工法の強みは、下地のひび割れが起きても防水効果を維持できることや、長持ちしやすいとことです。
しかし、重量物を設置・設置後に移動するといった、大きな負荷に耐えられないのがネックでしょう。
トーチ工法
アスファルト防水のトーチ工法とは、熱によってアスファルトを溶かす作業は共通していますが、溶かす方法などに大きな違いがあります。
トーチ工法は、下地に改質アスファルトルーフィングシートと呼ばれる、特殊なアスファルトシートをバーナーで溶かしながら貼り付ける防水工法です。
改質アスファルトルーフィングシートとは、アスファルトを浸透させた布・シートに天然アスファルトなどさまざまな材料を加えることで、耐久性や耐摩耗性などをアップさせた特殊シートを指します。
トーチ工法の強みは、アスファルトを溶かすための大型機械や周辺装置を用意・設置する必要がない点です。
また、熱工法ではネックとなっていた、アスファルト特有の臭いが広がらないところも、トーチ工法のメリットでしょう。
ただし注意点もあります。それはトーチ工法の難易度の高さです。
職人がバーナーを使い、シートを部分的に溶かすものの、慣れていないと接着不足が起こりやすい方法でもあります。
熱工法はシート全面に溶けたアスファルトを入れるので、どこが不足しているのか一目で分かります。
一方トーチ工法は、局所的にバーナーを当てるため均一な作業が難しく、高い技術力を必要される工事です。
常温工法(冷工法)
アスファルト防水の常温工法とは、熱を使わない防水工事です。
ですので、熱工法とトーチ工法とは、大きく違う作業内容です。
常温工法は、片面に接着効果が含まれる改質アスファルトルーフィングを、交互に貼り付けることで防水効果を作り上げます。
強みは、アスファルトをバーナーや釜で溶かしながら、接着・防水層を作る手間やコストが掛からないところです。
簡単に説明すると、シートを貼り付ける作業が主な内容ですので、その他に大掛かりな工程を組む必要がありません。
ただし、防水効果を発揮するためには、何枚もシートを重ねなければいけないため一定の重量になり、屋上の耐久性を考慮することが大切です。
アスファルト防水のメリットとデメリット
ここではアスファルト防水の主なメリットと、デメリットについて紹介します。
実績があるので防水効果の信頼性が高い
アスファルト防水の熱工法は、特に歴史が古いので実績も豊富です。
そのため、防水効果に関するデータも豊富で、信頼性が高いといったメリットを得られます。
また、トーチ工法や常温工法は比較的新しい工法ですが、防水効果の高いアスファルトを使用している点は共通です。
耐久性は20年程度ですので、他の防水工法よりも長く防水層を維持できるのも魅力的です。
熱工法やトーチ工法は高い技術力が要求される
アスファルト防水の熱工法やトーチ工法は、防水効果を期待できる反面作業難易度が高く、経験豊富な職人による工事が必要です。
どちらもアスファルトを溶かすため、均一に接着・伸ばす必要がありますし、均一に熱しなければいけません。
そのためアスファルト防水工事の実績が少なかったり、技術不足だったりする業者に依頼してしまうと、施工不良などトラブルのリスクもあります。
アスファルト防水には種類がありどの工法を実施するのか詳細を聞いておくこと
アスファルト防水と一言で表しても、実際は多数の工法があります。
また、熱工法が最初に開発された工事で、その後トーチ工法と常温工法が誕生しました。
アスファルト防水の強みは、防水効果の期間が20年程度と長い点や、荷重に対する耐久性の高さです。
一方アスファルト防水の各工法にはデメリットもあるので、屋上の環境や状態に合わせて施工してもらえる防水工事業者を選びましょう。
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